世の中の商品・サービスの価格は全て需要と供給が価格を決定しています。
これは、為替も株価も当然同じです。
需要と供給の法則は、すべての市場価格を支配しているのです。今回は需要と供給を示すエリア(=サプライ&デマンドゾーン)についてお伝えします。
需要と供給の本質がわかればあなたのトレードの質が向上することはほぼ間違いないでしょう。経済理論である、需要と供給を価格チャートを使う取引戦略についてお伝えします。略してS&D(Supply&Deman)戦略です。
【需給ゾーンとは何か?】
需給ゾーンは、デイトレードで使用される分析手法です。このゾーンは、爆発的な値動きの”前”に訪れる横ばいの価格行動の期間であり、通常、株式、FX、CFD取引プラットフォームの長方形ツールを使用してマークアウトされます。レジスタンスエリア・サポートエリアに似ています。ここについては過去の記事をどうぞ。
重要な要点はこちらです。
・供給ゾーンは、下降トレンドの前に形成されます。
・需要ゾーンは、上昇トレンドの前に形成されます。

サプライ&デマンド取引戦略は、これらのゾーンに価格が戻ってくることをエントリーおよびエグジット基準として使用します。この戦略は個別の市場に依存しません。つまり、FX市場、商品先物、インデックスCFDなど全ての金融市場で取引することができるのです。
【ゾーンの中でトレードを行うとは?】
デイトレード戦略のための需給ゾーンの描き方は読み飛ばしていただいて構いませんが、まずはなぜこのトレード戦略が有効なのか、確信を持っていただくために投資理論の背景を簡単に説明します。
デイトレード戦略におけるサプライゾーンとデマンドゾーンの描き方はこちらからご覧いただけますが、まずはなぜこの取引戦略が有効なのか、投資理論について簡単に知っておくことをお勧めします。
・サプライゾーンとは?
強い下降トレンドの起点となるローソク足やバーを、サプライゾーンまたはディストリビューションゾーンと呼びます。これは大口機関投資家が大量に保有しているある金融商品を市場にばら撒いているフェーズを指します。
市場に供給されているのです。
・ディマンドゾーンとは?
強い上昇トレンドの起点を示すローソク足やバーは、ディマンド(需要)ゾーンまたはアキュミュレーションと呼ばれます。このフェーズは大口投資家が安い価格で市場にある金融商品を買い集めている状況を指します。
市場に売り出されている商品が、大口投資家により買い集められて減っていき、供給が減っていくフェーズです。
【リチャード・ワイコフと市場原理】
金融市場の取引における需要と供給の最も単純な3つの概念について前提としてお伝えします。簡単にまとめるとこの3つの原理によって価格は動きます。詳しく知りたい方はこちらの本をお勧めします。
1.需要が供給より大きい場合、価格は上昇します。
2.需要が供給と等しい場合、価格は横ばいになります。
3.供給が需要より大きい場合、価格は上昇し、下降します。
金融市場は上記のような局面によって常に変動しています。上昇トレンドと下降トレンド、あるいはレンジ相場があります。
リチャード・ワイコフは、これらの相場の相互作用を説明した最初の市場アナリストの一人で、これらの相場に4つのカテゴリー分けをおこなっています。
①アキュミュレーション(Accumulation=Demad)(蓄積)
②上昇
③ディストリビューション(Distribution=Supply)(分配)
④下落
これらは、ワイコフの古典的な市場行動の図式で見ることができます。
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ワイコフの市場価格行動の説明では、需給ゾーンは蓄積ゾーン(accumulation)と分配ゾーン(Distribution)と呼ばれます。
ワイコフは、これらの局面を『クジラ』と呼ばれる者の行動によって説明しています。クジラは、最近では、外国為替市場ではマネーセンターバンク、株式市場ではヘッジファンドといった大きな機関投資家のことを指します。
これらの巨大な機関投資家達は、注文を一度に市場に出すことができません。なぜなら、彼らは価格を動かしてしまうほど多くの注文を溜め込んでいるからです。そこで、指定された価格帯で少しずつ買っていくのです。これが、チャート上で「需要ゾーン」として表示される原因です。
同様に、彼らがポジションを売却する場合、一度にすべてを行うことはできません。なぜなら、売り圧力によって価格が急激に下がり、自分たちの大量注文によって引き起こされた市場の下落に売らざるを得なくなるため、利益が減少してしまうからです。そこで、再び一定期間にわたって分けて売りを出し、取引のマーケットインパクトを最小限に抑えることで、「サプライゾーン」を作り出します。
最終的には、これらのクジラが売買していたように相場が崩れ、需要と供給のバランスが崩れた時期、すなわち価格トレンドが生まれます。
【需給パターンの種類】
まず、重要なことは、上昇トレンドの前にはいくつかの蓄積の時期があり、下降トレンドに入る前にはいくつかの分配の時期があることです。つまり、古典的なテクニカル分析の価格パターンと同様に、需給(Suply&Demand)による反発(反落)パターンと需給による継続パターンが存在するのです。
・S&D(需給)反発・反落パターン
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・急落→レンジ(ヨコヨコ)→反発は、強気の反転パターンです。
・上昇→レンジ(ヨコヨコ)→反落は、弱気の反転パターンです。
・S&D(需給)継続パターン
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・上昇→レンジ→上昇は、強気の継続パターン
・下落→レンジ→下落は、弱気の継続パターン
市場がどのような局面にあるのか、つまり基本的なトレンドは何か、またそれがどの程度の期間続いているのかを理解することで、どこが需要ゾーンで、どこが供給ゾーンかを見極める事ができる為、これらの把握はとても重要な要素です。
時間が継続された長いトレンドの場合は、反転を探してエントリーを待ち構えます。新しいトレンドでは、継続的な動きを探すことで利益に繋がります。
【サプライ&ディマンド(需給)ゾーンの描き方】
この理論を実践すると、ロングでトレードをする場合はチャート上で需要が供給を上回った場所を、またはショートトレードの場合は供給が需要を上回った場所を見つけるということになります。
これをうまく判断しチャートに描けるようになるとあなたのトレードは激変します。
それでは、需給ゾーンを正しく見極めるための手順を説明します。

・STEP1:現在の市場価格を確認する
・STEP2:チャートの左側を見る
・STEP3:緑や赤の大きなローソク足を探す
・STEP4:大きなローソクの原点を探す
・STEP5:この「原点」を中心としたゾーンをマークする
このようにして需給ゾーンを見つけていきます。
【サプライ&デマンド(需給)ゾーンの描き方】
ステップ5の需給ゾーンの描き方について詳しく説明しましょう。
需給ゾーンを描く際に、チャート上で探すべきローソク足のゾーンは2種類あり、どちらを選んでも大きな値動きを掴むことができます。
1.ベースから
2.単一のローソク足から
・需給ベース
取引用語では、ベースは通常、底を意味します。しかし、需要と供給の認識では、ベースは密集した統合の小さな(通常は10未満)のローソク足の集合を意味します。

・単一のローソク足
先ほどは集合体であったのに対し、こちらの場合は単純に1本の長い時間足のローソク足でゾーンを描画するのに十分な場合です。2本のローソク足が組み合わさり、ハンマーや流れ星、強気・弱気の包み足のパターンのようなローソク足パターンを形成することがよくあります。
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【強力な需要と供給のゾーンを識別方法】
どのようなテクニカル分析や取引戦略でもそうですが、強いシグナルと弱いシグナルが存在します。最高の取引結果を得るためには、弱いシグナルを無視し、強いシグナルを取る必要があります。
完璧な需要と供給ゾーンが設定できるようになれば、そのゾーンのほとんどが機能することが期待できるようになります。
1.狭い価格帯
ブレイクアウトを超える価格帯が広すぎるか、またはローソク足が長すぎる場合、不確実性を示し、クジラの蓄積である可能性が低くなります。
2.ローソク足が10本以下
需要または供給ゾーンは、理想的には1~10本のローソク足の間であるべきです。蓄積と分配には時間がかかりますが、その時間が長すぎると、後に再ど値動きがその価格を試す前にゾーンに蓄積していたクジラのポジションが枯渇する可能性があります。
3.強い値動き
需給ゾーンのブレイクアウト後に出現してほしいチャートパターンは、上昇(下落)三角形のチャートパターンです。これらのチャートパターンは強力な値動きを示す特徴があります。


4.新しく価格を試すもしくは、価格を試されていない
正確な需給ゾーンは、価格がブレイクアウト以来、そのエリアの価格を一回も再度試していないときです。サポートやレジスタンスと同じように、供給ゾーンや需要ゾーンが何度もテストされればされるほど、失敗する可能性が高くなります。
5.騙しまたは反発
これは、価格が一時的に反対方向にブレイクアウトしたが、その後すぐに反転することです。これは、大きな機関投資家などのプレーヤーが蓄積や分配のために余分な流動性を見つけるために「ストップ狩り」をしているサインです。
【需要と供給 vs. サポートとレジスタンス】
需給ゾーンは通常、支持線と抵抗線(S&Rレベル)の近くに描かれますが、全く同じものではありません。
サポートとレジスタンスとの大きな違いは下記の2点です。
・支持線は、少なくとも2つのローソク足の両端に高い安値がある場合、その安値で描かれます。
・抵抗線は、少なくとも2つのローソク足の高値のどちらかが低いローソク足の高値に描かれます。
【需要と供給の取引戦略】
取引戦略の一部として需給ゾーンを使用することは、リスク管理を含むことを意味します。
・例 20EMAを用いたS/D戦略
ここでは、移動平均によって示されるトレンドの変化を利用して、需要または供給ゾーンをさらに重要視し、取引の方向性を決定しています。
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- 価格が20日移動平均線を越えるまで待つ
- MAがクロスした方向に長いレンジのローソク足が出るのを見る
- 大きな値動きから需給ゾーンをマークする
- プライスゾーンの最初にエントリーオーダーをセットします。
- ストップロスをプライスゾーンの終点に設定する。
- 利益確定はリスクとリターンの比率が3倍で、かつサポート/レジスタンス・レベルに設定する。